4話 清原家で・・・

 

 

 

 

「ここでいいんだよな?」

 

何処にでもありそうな一軒家。

 

表札にはちゃんと“清原”の文字が書いてある。

 

さて、鞄の中に鍵ぐらいはあるだろう。

 

竜輔の鞄から鍵を見つけて、ドアに差し込む。

 

ノブを回して中に入る。

 

「ただいまぁーー。」

 

竜輔は元気よく誰もいないはずの家に叫んだ。

 

「おかえり〜。」

 

ノリで言ってみたが、なんか悲しい。

 

「かあちゃん、ごほんよんで!」

 

いつの間にやら竜輔の手には絵本が握られていた。

 

はい!? 私は生まれてこの方絵本を幼児に読んで聞かせた経験はありませんYO!

 

誤算だ。家に帰ればなんとかなると思ったが、面倒を引き起こしてしまった。

 

しかたない、愛の鞭とかいうのをやってみるか!

 

「竜輔、あんたもうガキじゃないんだから、一人で読めるようになりなさい!」

 

「や〜だ〜、よんでぇ〜」

 

なるほど、相当母親に甘えて育ったんだなぁ。

 

「だ〜め! 1人で読めるようになるまで夕飯はなしだよ!」

 

「ぶぅ〜〜。」

 

拗ねた。

 

1人で渋々絵本をパラパラと見ていく。

 

しかし、よくもこいつ絵本なんて残してたなぁ。ウチにはまだあったかな?

 

まぁ、どうでもいいけど・・・

 

する事がないので、2階にあるであろう、竜輔の部屋に行ってみることにした。

 

 

 

階段を登りきったところで二手に分かれていて、一方は机と小難しい本が一杯入った本棚。てっきりここかと思ったが、高校生の

部屋にしては殺風景すぎる。

 

ここは父親の書斎なのだろう。

 

もう一方は机とグチャグチャの本棚、テレビ、ベッド。

 

「ここか?」

 

始めて入る同年代の男の部屋。

 

なんか緊張するなぁ〜。

 

床には本が積まれていた。てっきりえっちぃ本かと思ったが・・・

 

「税理士をめざせぇ〜!? こっちは・・・ローマの中心で哀を語れぇ〜? これは・・・センチメンタルドラグーン究極攻略??」

 

テーマはバラバラで単行本やゲーム雑誌いろいろあった。

 

「でも、意外と普通なんだな〜。ん? なんだこれ?」

 

机の上に置かれた写真たて。

 

写っているのは幼い3人の子供。竜輔を挟んで両側に女の子が写っている。

 

体操服を着ているところを見ると小学校の運動会のようだ。

 

左は美佳さんだろう。右にいる女の子は知らない子だ。

 

でも、誰かに似てるような・・・ま、いっか。

 

ふと出口を出ると、

 

「かあちゃん!」

 

いつの間にか竜輔がのぼってきていた。

 

「え、何?」

 

「それ、なあに?」

 

竜輔は私が持っていた写真を指差す。

 

「ああ、これ? さあ〜何なのかね?」

 

写真を渡してみる。

 

なんか目の色が変わった気がした。

 

とその時、

 

「・・・俺、美佳、やーちゃん。」

 

「は?」

 

「あいつ、いっつも俺がいないと何にもできなくて・・・」

 

「お、おい、竜輔? 記憶戻ったのか?」

 

「・・・少し一人にしてくれませんか?」

 

そう言われて私は竜輔の部屋をあとにした。 

 

 

 

しかし、ビックリだ。あんな急に元に戻るとは・・・。

 

階段から降りてくる音がする。

 

心臓がいきなり跳ね上がった。

 

どうする? 何て声かけたらいいんだ?

 

襖が開かれる。いつものクセ(?)でファイティングポーズをとってしまった。

 

「姐さん・・・」

 

「あ・・・てめぇ〜明日、一応クラスの連中・・・じゃなくて、渡辺先生に謝っておけよ! 迷惑かけたんだし。(自分が原因のクセに)」

 

「よくわからないんすけど、わかりました。」

 

「で、あの写真・・・大事なものだったのか?」

 

疑問を投げかける私。

 

「えぇ、まぁ。」

 

「ふぅ〜ん。」

 

さっき言ってた“やーちゃん”ってのが気になるけど・・・

 

「・・・姐さん、一つお願い聞いてもらえません?」

 

「何だ? 改まっちゃって。」

 

「その・・・背中貸してくれませんか?」

 

始めは何のことかさっぱりわからなかった。

 

でも、竜輔の顔を見てなんとなくわかった。

 

「・・あぁ、背中とは言わずに・・・遠慮すんなって!」

 

竜輔は私に駆け寄ってきた。

 

私は竜輔を優しく抱きしめた。

 

「ううう・・・」

 

「無理しちゃってさ。あんまり溜め込んでっと体に毒だぞ!」

 

しかし、このときどうやら力が入ったらしく・・・

 

「ん〜、ん〜ん。」

 

「おあ、しまったぁ!!」

 

とりあえず離す。

 

「ね、ねえさん、胸がぁぶはっ」

 

竜輔は鼻血を景気よくだして失神してしまった。

 

ま、いつも通りに戻ってよかったかな? あはは・・・

 

 

 

 

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