3話 回復大作戦!

 

 

 

 

「はぁ〜? “眠りの森の王子作戦”!?」

 

教室に帰ってくるなり私は大声で叫んだ。

 

「そうだ、これしかない! 本来ならば、王子が姫にだが、今回の眠れる〜のは男だからな!」

 

えらい事になってました。

 

私は作戦実行員に勝手に任命されていて、クラス中が会議をしていたのです。

 

「あのさ、話が見えないんだけど〜・・・」

 

「無論、清原竜輔を元に戻す為の会議だ。た、たしかにあのままでも俺としてはいいのだが・・・。」

 

「どこかだよ!」

 

私はクラス委員の前田に罵倒を浴びせる。

 

「わ、わかった。軽いジョークだ。して、この作戦、要は・・・俺の口から言うのもなんだから藤堂、言ってやってくれ!」

 

「り、了解。落ち着いて聞いてね、氷見院さん。要は・・・清原君にキスしてやれ!って事よ。」

 

「・・・・・」

 

「あちゃ〜、不味かった? なんなら他の作戦でも考えようか?」

 

「いや、何が何でも氷見院にやってもらうぞ!」

 

控えめな藤堂さんに強引な山南。

 

大体、そんな作戦で元通りになれば苦労はしないが・・・キスかぁ。

 

これまたキツイな。竜輔とは付き合っているとは言え、“ふぁーすと”がこんな形で終わるのはなんとも気が引ける。

 

「藤堂さん、是非別のいい案を!」

 

まともそうな藤堂さんに救いの船を求める。

 

「ええ!? う〜ん、この前読んだ小説に、主人公が今の清原君みたいなのになって・・・そうだ! 一番好きな人と一緒にいればよかったのよ! やっぱり氷見院さんしかいないわねぇ。」

 

はぁ〜、やっぱり私しかあいつを元に戻せないわけね。

 

ま、私が原因でなったもんだからどうにかなるとは思うけど・・・

 

「・・・みんな、あいつの為にいろいろありがとね。結局私が全部悪いと思うからなんとかしてみる。今日は直すのに努力してみるから授業は休むし、明日以降に今日の分のノート見せてね。じゃ!」

 

もうこうなったら当たって砕けろ! なにがなんでもあの馬鹿を元通りにしてやる!

 

固く決意し、保健室に戻った。

 

 

 

「あ、氷見院さん、見てよこれぇ〜。」

 

やっぱしエライ事になってました。

 

渡辺先生は泣きついてきた。よく見ると顔には引っかき傷があった。

 

「あちゃ〜、先生も災難でしたね。」

 

「これは災難ってもんじゃないわよぉ〜!! これじゃお嫁にもいけないわぁ。」

 

「先生には旦那様がいらっしゃるでしょ!」

 

「あ、それもそうねぇ〜。やだわ私ったらぁ〜。」

 

冗談やボケでは済まないような事を言っている先生をスルーして、うずくまって泣いている竜輔に歩み寄る。

 

これは私の責任。

 

藤堂さん、とりあえず信じるぞ!

 

「ほらほら竜輔、こっちおいで。」

 

くぅ〜、虫唾が走る演技だな。

 

「かあちゃん!」

 

竜輔は嬉しそうに私に抱きついてくる。

 

まったく、体が小さければ絵にはなっていただろうに・・・・

 

「かあちゃん、かえろ!」

 

「え!? あ〜うん。帰ろっか?」

 

手を繋いで、保健室をとりあえず出る。

 

「あ〜、先生! 忌引きの早退にしといてください。」

 

「わかったわぁ〜。がんばってねぇ(シクシク)」

 

 

 

で、今、校門を抜けたとこです。

 

竜輔はニコニコしながら私の手を引っ張る。

 

「はやくぅ、はやくぅ。」

 

え〜と、顔だけです。顔だけ可愛いのは認めます。

 

しかし、体は私とそんなに変わりません。キモイって言えばそうかもしれません。

 

こんな姿、誰かに見られたら最悪です。

 

「かあちゃん、のどかわいたぁ〜。」

はいはい。自販機で買ってやるからさぁ〜。

 

うんざりだ。こんな事いつまでもやってたらこいつの事は絶対嫌いになってしまうだろう。

 

さて、何処に連れて行こう?

 

家に連れて行くのが一番安全だ。

 

しかし・・・親父とお袋殿は仕事で家にいないのを差し引いても、メイド達が問題だ。

 

大体、家のメイドどもは何かにつけて影でこそこそとしている問題人ばかりだ。

 

こんなに豹変した男を連れて変えるのは・・・ヤメだヤメだ。竜輔の家に行こう。

 

未だ手を離そうとはいない竜輔を引っ張って清原家へ歩を進めた。

 

 

 

 

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