13話 好きになった理由

 

 

 

 

「次は何処に行きます、姐さん?」

 

「・・・・」

 

お〜い、どうしました? 姐さんってば元気ないよぉ〜。

 

俯いたままって感じだ。

 

「姐さん、どうかしました? まぁ、そういう陰鬱な顔も素敵っすけど・・・」

 

「・・・・」

 

むむむ、俺ってば次は何した!?

 

「ははぁ、俺よりさっきの不良の方が好みでした?“そうだ”なんて答えた日には俺、首吊りますよ? ぜ、是非止めに来てくださいね!」

 

「・・・・」

 

ツッコミすらなしですか?

 

「・・・ば・・・・・か・・・・」

 

「え? うわわ」

 

姐さんはいきなり俺の手を掴むと裏路地みたいなとこに連れ出した。

 

うひゃ、姐さんってばもしかして大胆にもここでおっ始める気?

 

「聞いた・・・」

 

「え、何をですか?」

 

「全部。」

 

「ううう? 話が見えんのですがねぇ。」

 

姐さんが睨んできた。

 

「お前・・・母親いないんだってな?」

 

思い出したくもない事を言ってくれますね・・・

 

「はぁ〜・・・・・美佳に変なこと吹き込まれたんすか? あいつ、余計な事を・・・」

 

嫌だ。こんな話を他人と、しかも姐さんとすることになるなんて。

 

冗談じゃない! 俺は姐さんとは一緒にいたいけど、そんな話なら別だ。

 

「姐さん、今日は帰ります。急用を思い出しちゃって」

 

「俺・・・・似てるのか?」

 

「っ!!!!!!」

 

美佳の馬鹿! 姐さんにいらんことを吹き込んでんじゃねえぞ!

 

くそっ、これじゃ全部丸潰れだ。

 

「姐さん、俺はそんなんで軽々しく人を好きになんてなりませんよ。」

 

「じゃあ俺を好きになった理由を聞かせておうか。」

 

困った。確かに姐さんがさっき言ったのでおおむね合ってる。

 

だけど、何だかんだ言って俺にかまってくれる姐さんの心の広さにも・・・それでいいじゃないかって? 男には譲れない場面もあるのさ。

 

「あ〜〜〜、わかりました。今後一切姐さんに近づきませんから許してください。俺、なんか勘違いしてたみたいっす。」

 

「勘違い?」

 

「俺、姐さんと一緒にいれば・・・・かあちゃんがいつも側にいてくれるような気がしたんす。でも違った。それは無理やり自分に言い聞かせてただけで、本当はここにいつもいたんです。」

 

俺は胸に手を置いた。

 

「・・・・・そうか。」

 

「なぁ〜んてね♪ ちょっとカッコよく言ってみましたぁ〜。でも、別の意味でも姐さんのことは好きですからね。ってわわ!!」

 

姐さんが抱きついてきた。

 

そして、肩に顔をうずめて言ってきた。

 

「わかった、付き合ってやるよ。俺のこと好きなんだろ?」

 

一瞬耳を疑った。

 

「あ、あああの同情だったらこっちからお断りっすよ?」

 

「馬鹿、今度は俺の気持ちを確かめるんだ!」

 

気持ちですか・・・・そうですか。

 

なら話は早い。

 

「んじゃ、これからよろしくおねがいします!」

 

「あぁ、よろしくな。」

 

んで、俺と姐さんは付き合い始めたってわけだ。

 

 

 

 

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