9話 氷見院家の館で・・・

 

 

 

 

俺は今、姐さんの家にお邪魔している。

 

いつも外からしか見た事ないからよくわからなかったけど、相当デカイ家だと言うことがわかった。

 

え? 何でお邪魔しているのかって??

 

やだなぁ〜、野暮な事聞くなよぉ。

 

勿論、姐さんのお父様に姐さんを・・・

 

「その続き言ったら“モケモケ室”に放り込むからな!」

 

「・・・はい。」

 

俺は今、テーブルに座っている。

 

世界史の教科書に載っていそうな、ハプスブルク家宜しく的な宮殿のリビングルームと言えば良いのだろうか? とにかく食堂だ。

 

姐さんのお父様にどうやら気に入られたようで、今夜はディナーをご一緒することになったというわけだ。

 

「竜輔君、君はフルコースを食べた事はあるかね?」

 

「い、いえ、とんでもございません! 我が家はごくごく普通の家庭なのでそのような贅沢は一度も・・・。」

 

「ははは、そうかそうか! ならば今日はゆっくりと楽しむが良い。」

 

とかなんとか言われて、今は出てくる物を待っているいるというところだ。

 

「ふふふ、しかし柳もいい男を連れてきてくれたものだ。まさに柳ぴったりって感じじゃないか?」

 

「えぇ、そうですね、あなた。」

 

お母様にまで誉められチッタ。エヘ♪

 

にしても、お母様もお美しいことで。きっと姐さんはこの方から今の美貌を受け継ぎなさったんでしょうね。

 

嬉しくなって反対側に座っている姐さんを見ると、

 

「何?」

 

冷たく返された。

 

不機嫌だ。

 

俺は一体何をしたというんだ!?

 

そういえば、ドサクサに紛れて姐さんとする物が出来なかったような・・・。

 

「その話はするな!」

 

小声だが、明らかに怒っている。

 

姐さん、俺が一体何をしたというんですか? というか姐さん地獄耳ですか?

 

 

 

私は今すごく不機嫌だ。不機嫌というより、気持ち悪くて吐きそうなのが正しい。

 

何でかって言うと・・・見てはいけないものを見てしまったからだ。

 

まさか、親父にそんな趣味があったとは・・・

 

整理するとこうだ。

 

親父が“証”として馬鹿とキスしろと言った。

 

私は不本意ながら捨て身の覚悟で突っ込んでいった。

 

その時、唇よりデコが先に馬鹿のド頭に当たったらしく、吹っ飛んだ。

 

ありえない方向(つまり親父の座っている方向)に突っ込んで親父ごと後ろに倒れた。

 

絵としてみると、馬鹿が親父を押し倒した格好になる。

 

んで、そこまでなら事故で済む。が、済まなかった。

 

要は、馬鹿の唇と親父の唇がくっ付いていた。つまり、キッスしていたのだ!

 

馬鹿は幸い、気絶していたらしいが、親父はその馬鹿とのキスを“堪能”していたらしく、

 

「う〜む、よかったぞ!」

 

なぁ〜んて、爽快な顔してたもんだから問題だ!

 

父親にピ――(自主規制)な趣味があると知られては生きてゆけませぬ。

 

馬鹿に意識がなくて本当によかった。それだけが唯一の救いだ。

 

だが、なんか馬鹿を見てるとむかつく。

 

昨夜編み出したばかりの新奥義、『メガトンダイナマイトグレイトぉ〜』を放ちたくてウズウズ感が止まらない。(ちなみにこの技、最後の“ぉ”を強く発音する所がポイント)

 

フルコースとやらを始めて経験して思った感想、腹一杯です・・・。御馳走様でした。

 

だって、次から次に出てくるんだもん。

 

死ぬ・・・でも最後に出てきたデザート“苺のジェラート”は美味かったなぁ。

 

甘い物は別腹ってね♪

 

にしても、今はそんなことはどうでもいい。

 

なんと、今、姐さんの私室兼寝室にいるからです!

 

おぉ、これが麗しのマイスィートルーム・・・

 

「何鼻の下伸ばしてんだよ?」

 

「い、いや〜、結構片付いてるなぁと思って、あはは・・・。」

 

「・・・いつも掃除してくれる人がいるからな。」

 

「ほぉ、そりゃ楽ですね。」

 

「ま、散らかすと言っても“サンドバッグ”と“10kgダンベル”2個だけだからな、散らかりようもないさ。」

 

「そりゃ、そうですよねぇ〜。」

 

「・・・・」

 

「・・・・(汗)」

 

「・・・・」

 

そ、そうか! ここで姐さんは俺の為に日々進化している愛の鉄槌を研究しているというわけだな? ほほう、ここで・・・

 

「なんだ、キョロキョロして?」

 

「な、何でもないです! あ、窓開けていいですか? うわあ、いい眺め!」

 

「朝以外はな。」

 

「霧でもかかるんですか?」

 

「てめぇが視界に入るから!」

 

あ、そうか! そう言えば、あそこでいつも姐さんが出てくるのを待ってるんだっけ?

 

「ははは、姐さんもここから俺を眺めているんですね? ヤダなぁ〜てれゴペパ!!」

 

「いい加減にしとけよ、お・に・い・さ・ん?」

 

姐さんがいつにも増して強力な一発をくださった。今回は以前、玖○国に住んでいたとか言う発掘少年、小△君や海賊コックの○ンジさんもビックリな後ろ向きに蹴り上げる技で俺の体を壁に叩き付けた。

 

そう言えば、本日一発目。

 

「さあて、この部屋に通してやったのは・・・わかってるよな?」

 

「あ、あい・・・姐さん、照れなくとも俺も初めてですから、優しくしてくだ」

 

「正解は“新技の実験台になれ”だ!! 地獄で閻魔にしごかれて来いぃ!!!! 

 

『メガトォォンダァイナマイトォグレイト“ぉ”』!!!」

 

本日2発目の技は、壁にめり込んだ俺をひっぺはがして、放り投げ、着地するまでに4回パンチとキック、着地と同時に踵落とし! 見事に背骨を粉砕された。まぁ、俺は意識を2回目の蹴りぐらいから放棄していたんだけどね。

 

 

 

 

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