10話 一途

 

 

 

 

俺の家。

 

鍵を開ける。

 

戸を開け・・・・開かない!?

 

WHY? 何故だ! 鍵が開いてたのか・・・? な〜んか嫌な予感。

 

再び鍵を開ける。

 

「・・・・さ、ささ、どうぞ!」

 

「邪魔するぞぉ〜。」

 

「ん? はぁ〜!?」

 

靴が一足置いてある。

 

サラリーマンがよく履いてる黒い靴。

 

や、やっぱり!? 親父が帰ってる。

 

「よ! お帰り、そしてただ今! おっ久〜♪」

 

親父が居間の方から顔を覗かせる。

 

髪は多少の白髪が混じっていて、髭は今日は剃っていないって程度の長さ。

 

顔のシワが増えた? とにかく、酒臭そうな顔は相変わらずのようだ。

 

「お、親父ぃ、昨日帰ってこなかったからてっきり来週あたりかなって思ってたぞ。」

 

「おぉ、ワリィワリィ。寝過ごして予定してたのに乗れなかったんだ。それはそうと・・・」

 

親父はいきなり俺の首を絞めて奥へと連れて行く。

 

「おいおい、まじかよ!? やるなぁ息子よ。とうちゃんは嬉しいぞ!」

 

「あはは・・・いつまでもかあちゃんの背中を追いかけてるわけにはいかないからな。」

 

かなりニヤつく親父に適切な対応をしてみせる俺。

 

「しかも、かあちゃん似の美人じゃないかい! 何が親離れだよ、ちゃっかり追いかけちゃってるじゃないかよ。」

 

「う、うるへー!」

 

「あのぉ〜。」

 

「「うひゃ!!」」

 

親子そろって驚く。

 

「い、いやぁ〜、悪かったね。え〜と、こいつの父親などやってるもんだ。一応聞いておくが君は?」

 

「そこの顔を青白くしているお子さんの友などやっております。」

 

この時、姐さんの言った声は聞き取れていなかったりした俺だった。

 

 

 

「ね、姐さん、今日はゴメンナサイです。まさか、親父が帰っているとは思ってもみなかったもんで。」

 

「そか、まあいいさ。ここ来ればだいぶ落ち着くんじゃないか?」

 

「そ、そうですかね?」

 

いや、あの親父のすることだ、戸の向こう側でこちらの会話を聞き耳を立てているのではないか?

 

「にしても、竜輔って案外、普通なんだな?」

 

「え、何のことっすか?」

 

「またまたぁ〜、わかってんだろ?」

 

「う、うい? 何のことやら、姐さんの口から言ってくださいよ。」

 

マジでわからない。

 

そういえば、最近の姐さんってば何を考えているのかさっぱりだ。

 

「う〜ん・・・男の部屋になら一冊くらいあってもおかしくないと思ったんだが。」

 

「本っすか?」

 

「うむ。えっちいやつ。」

 

「ぶっ!!!!」

 

姐さんってかなりそういうのに興味あったりするんですか?

 

前にそういう系のこと言ったら顔真っ赤にして必殺きめてきたのになぁ。

 

何がそこまで姐さんを変えているのやら。親父並みに読めない・・・

 

「ないのか? もしかして・・・不能?」

 

「そ、そんなわけないじゃないっすか!」

 

「じゃあ・・・・やるか? ここで。」

 

え!? 今なんとおっしゃいました?

 

「だ・か・ら、ここでするかって聞いてんだよ! 興味あるんだろ?」

 

「か、からかうのはよしてくださいよぉ! 確かに俺は男だから好きな人とのそういうのだって興味ありますよ・・・でも、やっぱり最近の姐さんは変っすよ。何かあったんですか?」

 

すると、姐さんの顔が暗くなる。

 

「・・・怖いんだ。」

 

「はい?」

 

「お前さ、最近結構モテてるだろ?」

 

確かに。自分でもよくわかんないけど。

 

「俺は信じてるけど、やっぱ他の女に興味もたれるかもしれないと思うと・・・怖いし。」

 

あぁ、そういうことですか。

 

他の女に取られたくない。独占欲って奴ですか?

 

「今のうちにやることやっておけば絆だって深まるだろ?」

 

なんて古典的な・・・。まぁそんな姐さんも素敵といえば素敵だが。

 

「ま、まぁ、落ち着いてください。俺は姐さんに“しか”興味ありませんよ。」

 

「じゃあ、あの写真はどう説明してくれる?」

 

そう言って、机の上にある写真たてを指差す。

 

「あぁ、あれは多分、小学校の運動会の時の写真ですよ。お、思い出くらいいいじゃないっすか?」

 

「やだ・・・。」

 

「え!?」

 

「あんたは俺の物。他の女は見なくていい!」

 

「ちょ、まじで落ち着いてくださいよ。」

 

「うるさい!!!」

 

拳を振り上げる姐さん。

 

正面にきた瞬間――――――避けた。

 

「なっ!?」

 

頬の横を通過していく拳の先の腕を掴む。

 

「どうした、こんなもんか?」

 

「あ、あ・・あ・・・・・・」

 

「覚えてますか? 俺と姐さんが始めて会った時のこと。こんな感じで姐さんのパンチを避けて、この手の美に見惚れちゃって・・・今になるとなんじゃそりゃ?って思うんですけどね。」

 

「・・・・」

 

姐さんは手を引っ込めるとバツが悪そうな顔をして、視線をそらした。

 

なあに心配してるんすか? 姐さんらしくもない。今更他の女なんて、俺には野郎にしか見えませんよ?」

 

「は、ははは、野郎・・・か。そりゃいい。」

 

姐さんは目に涙を溜めながら笑った。

 

「それに姐さん、無理に枠にはまろうとしてませんか? 絆なんて、仮に俺達が男同士、または女同士でも親友と呼べる位の友情は今現時点であると思います。心配しなくてもいいっすよ!」

 

「そ、そうか?」

 

はい、これにてキザなシリアスシーン終了。

 

こんなこと言ってる自分に虫唾が走るっつーの。

 

俺は姐さんを抱きしめた。そして、一言、

 

「姐さん、抱き心地が最高っす!」

 

「・・・こっのエロ馬鹿がーーーーー!!!!!」

 

姐さんのもうすでに十八番になった(?)必殺技、“メ○粒子タイフーン”が俺の腹に直撃した。

 

 

 

 

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